で、今。
丹波はその新しい眼で、この柳生対馬守――家老の田丸主水正が殿様の役を買って出ている偽物《にせもの》とは丹波をはじめ不知火組は、それこそ誰不知矣《たれしらぬい》――のようすを、じっと見なおしました。
ところで、にせ物というものは、黙っていれば、それで通る場合が多いのですが、ほん物でないだけに気がとがめるせいか、とかくこの贋物《がんぶつ》にかぎって、いろいろと口が多い。よけいな言葉を吐く。
それに、田丸主水正は。
一時でも、この源三郎の兄となったことが、うれしくってうれしくってたまらないんです。
いつもは。
田丸の爺イ、田丸の爺イと、呼び捨てにされて、頭ごなしにどやしつけられてきた。箸にも棒にもかからぬ若殿様の伊賀の暴れん坊。
この一刻《いっとき》だけは、かりにもその源三郎を見おろして、きめつけることができるのですから、イヤ主水正、大人気もなく、ついいい心持ちになっちゃって、
「オイ、源三郎、早くしたくをせぬか」
「はい、兄上、ただいま」
と源三郎、ちくしょう! 田丸の爺め、あとで思いしらしてやる! と、心中に歯を食いしばりながら、近侍のすすめる白羽二重の襷《たす
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