らく拙者のじゃまをしてこられた、峰丹波どの……」
むろん名前は、日本国じゅう、いかずちのごとくとどろきわたっている伊賀の殿様だが、峰丹波、まだ眼通りを得たことがない。
対馬守のお顔は、知らないんです。
で、換え玉などとは、もとより思うわけもなく。
ギョッとすると同時に、丹波はくずれるように、土に小膝をつきかけた。
「ヤ? これは大先生にござりまするか。そうとも存ぜず、かかる異様のいでたちにてまかりいで……」
あわてて、袴の股立《ももだ》ちをおろそうとした。
「お見ぐるしき段、ひとえに御容赦を――手前は、ただいま源三郎様よりお言葉のありましたる、峰丹波と申する未熟者……」
「イヤイヤ! その御挨拶では、かえって痛みいる」
田丸主水正、なかなかどうして芝居気がございます。すっかり主君対馬守になりきって、鷹揚《おうよう》にそっくりかえっている。
ゆうべおそく。
やっとのことで作阿弥《さくあみ》老人の神輿《みこし》を上げさせ、トンガリ長屋からつれ出して、麻布の上屋敷へ引っ張ってゆくと。
この道場の源三郎のもとから、安積玄心斎が使者に来ていて、もうひとつ、主水正の命令《いいつ》
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