三郎が、例の蒼白い顔をゆがめて笑いながら、出て来ました。
「ながらく失礼つかまつった。今朝《こんちょう》はまたこの真剣勝負、さっそく御承引あってかたじけない」
皮肉な挨拶。
だが、峰丹波は、それに言葉を返すより、何よりも気になってならないのは、この源三郎よりも腕達者だという今日の判定役。
「お立ちあいは、どなたで――?」
と、そこらの人々へ眼を走らせた。
猫《ねこ》と鼠《ねずみ》
一
「うむ、その儀は――」
と源三郎が、いつになくつつましやかな真顔《まがお》で、ツと身を避けると……。
うしろに。
でっぷりした中年の侍が、威儀をただして立っている。
象のような細い柔和な眼、抜けあがった額部《ひたい》。両手をうしろにまわして、悠然たる殿様ぶり……。
大刀をささげたお子供小姓をしたがえ、小刀を前半《ぜんはん》にたばさんだ――柳生藩江戸家老、田丸主水正。
「兄でござる。兄、柳生対馬守……」
源三郎が、まじめくさった顔で、丹波に紹介《ひきあ》わせた。
そして、主水正へ、
「兄上、これなる御仁が当|不知火《しらぬい》道場の師範代――というよりも、なが
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