いていた。
 深夜だし、密議のことだし、しめきってある。
 ドン! と、その板戸に、何かぶつかる音がしたのです。たった今。
 たとえてみれば、人間が一人、力いっぱい体当りくれたような……。
「なんだろう、何者か立ち聞きをしていたのでは――」
「あけてみろ」
「イヤ、貴公《きこう》、あけてみろ」
「なにを臆病な……よし! わが輩があけてみる」
 と気おいだって、たち上がったのは、若侍の山脇左近《やまわきさこん》。

       三

 威勢よくつっ立ったものの、おっかなびっくり。
 だが。
 なみいる仲間の手前もある。いまさら引っこみのつかなくなった山脇左近、
「誰だッ?」
 叫びながら、端の雨戸を一枚引きあけた。
 ドッと音して吹きこむぬれた夜風。戸外《こがい》には、丑満の暗黒《やみ》につつまれた木立ちが、真っ黒に黙して、そのうえに、曲玉《まがたま》のようにかかっているのは、生まれたばかりの若い新月。
 人っ子一人、犬の仔《こ》一匹いません。
 照れかくしに左近は、若いお侍さん、小遊興《こあそび》のひとつもやろうというおもしろい盛りなので、意気ぶった中音《ちゅうおん》に、
「たたく水
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