真夜中にお供もお連れにならず、いったいどちらへ?」
「それは、わしにはわからぬ。なんだかこの二、三日、ひどくしょげ返っておられたよ。あの年ごろの婦人は、ふっと無情を感ずることがあるものだからな……」
 丹波もさびしそうな顔をしたが、気がついたように、大声に、
「いずれにしても、婢《おんな》どもの知ったことではない。こちらはお蓮様どころではないのだ。お末の者一同、さわがずと早く寝《やす》めと申せ」
「さようでございますか、それでは――」
 と、早苗は、あたふたとさがって行く。
 あとは、車座《くるまざ》になって一同が、不安げな顔を見合わせて、
「どうしたのだろう、お蓮様は」
「何から何まで、意のごとくならんので、ヒステリイを起こしたのでは……。」
 ヒステリイなどと、そんな便利な言葉は、その当時はまだなかった。女の言ったりしたりすることで、男のつごうが悪いと、世の良人《おっと》諸君はみんなヒステリイで片づけてしまう。これは、余談。
「生きている源三郎を見て、心境に大変化をきたしたのかもしれぬテ……オヤ! なんだ、今の音は」
 この言葉の最中に、皆は、庭へ向かった雨戸のほうへ、一度にふり向
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