して、お夕餉《ゆうげ》のお膳をおすすめしても、食べとうないとおっしゃるばかり、お箸ひとつつけずに、そのままお下げになりましたが、いつのまにか、ふっとお姿が見えなくなりまして――」
「ナニ?」
 ギョロリと大きな眼を向けた丹波、この眼で、腰元などにはひどくおどしがきくので。
「そこここをおさがし申したであろうな」
「それはもうおっしゃるまでもございません。お部屋というお部屋はもとより、お庭のすみずみまで、わたくしども一同手わけをして……もっとも、鬼どもの住家《すみか》のほうへは、恐ろしゅうて近よれませんが」
 侍女どもが「鬼の住居《すまい》」と言っているのは、源三郎とその一党が、ふしぎな頑張りをつづけている同じ邸内の一角のことだ。
「フウム」
 丹波は思案に眼をつぶって、
「十五や十六の少女《おとめ》ではない。何かお考えがおありで、そっと戸外《そと》へ出られたものであろう」
「それにいたしましても、私どもへひとことのおことばもなく――何やらこの胸が、さわいでなりませぬが」
 額を青くしている早苗を、丹波《たんば》はうるさそうに見やって、
「大事ない。おっつけ御帰館になろう」
「でも、この
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