番《ちょうつがい》が、どうしてもいうことをききませんようなありさまで、不覚ながら障子につかまって、やっとおのおののところへ注進に来ましたようなしだいでござりまして――」
言うことまで、いやにながったらしい。
山のような角ばった前山彦七が、水銀でも飲んだようなしゃがれ声を出して、
「貴殿も幽霊と思われた組だな。どこをどうして助かったか知らぬが、あれから何事もなくずっと道場に暮らしていたような面《つら》つきでヒョコッと庭におりて水をまいていたのだから、まったくもって皮肉なやつで……まず拙者は、ひと目見るより早く、ペタリとすわった――」
「ハハア、腰を抜かして」
「イヤ、そう言ってしもうては、花も実もござらぬ。実は、下からすかして、彼奴《きゃつ》に足があるかどうか、それをたしかめようと存じたので」
「幽霊か否《いな》かをナ。なるほど、ときにとって思慮ぶかい御行動……」
はや腰を抜かしたのが、ナニ、思慮の深いことがあるものか、仲間でほめ合っている分には、世話はない。
冗談はさておき。
あの漁師の娘、お露坊の嫉妬から出た注進によって、玄心斎その他が、あわてふためいて三方子川尻の六兵衛の
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