を顎《あご》で使い、剛腹老獪《ごうふくろうかい》な峰丹波をはじめ、多勢のあらくれた剣士を、びっしりおさえてきたお蓮様だったが。
それが、今の彼女は。
髪はほつれ、お化粧《つくり》ははげ、衣紋《えもん》はくずれて、見る影もありません。まるで、このトンガリ長屋のおかみさんの一人のよう……。
「思うことは、何もかもくいちがうし、アア、たった一人の子供にまで、こんな愛想づかしをされて、わたしという人間は、この先――」
そこまで言いかけたお蓮様、突如、つったちあがった。
血ばしった眼で、お美夜ちゃんを見すえて、
「サ! おいで! 表に駕籠が待たしてある。お迎いに来たんだよ。いやだなんて言わせるもんか」
もうひとつのお迎え駕籠……。
すると、このときまでだまっていたチョビ安、街の所作事から帰ったままの着つけでいたが、肩の手拭を取って、いきなりねじり鉢巻《はちまき》をしだした。それから、おもむろに両手の袖をたくしあげ、クルッとお尻をまくって、ピッタリすわりました。
「エコウ! どちらのお女中か知らねえが、あこぎなまねアさしひかえてもれえやしょう」
やり始めた。
小さな兄哥《にい》さん
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