りに事が運んだら、いずれは嬢《じょう》やとお父《とう》様を道場のほうにお迎えしようと……ほんとうにいつまでも、こんな裏長屋に置こうとは思っていなかったんですよ」
 作阿弥の駕籠を送って、長屋の人たちは、ゾロゾロ竜泉寺の通りに行列をつくってゆくらしい。トンガリ長屋は、急にひっそりとして、ここ、今は主なき作爺さんの住居《すまい》には、油のつきかけた破れ行燈《あんどん》のみ、黄っぽい光を壁へ投げている。その前にすわった泰軒、お蓮様、お美夜ちゃん、チョビ安の大小四人の影を、複雑にもつれさせて。
 大胡坐《おおあぐら》をかいた泰軒居士が、じっと眼をつぶっているのは、今、柳生対馬守の嘱望《しょくもう》もだしがたく、命を賭けて神馬の像を刻《きざ》もうと、このたびの日光造営にくわわっていったあの作阿弥を、こころ静かにしのんでいるらしい。
 人間は、こうも変わるものかと思うほど、すっかり別人のようにうちひしがれているのは、お蓮様だ。
 本郷の司馬道場では、このごろこそだんだん、あの源三郎一味におされぎみに、わが屋敷とはいいながら肩身がせまくなっているものの、それでも、椎《しい》たけ髱《たぼ》の侍女数十人
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