ごいて、
「お蓮様とやらには、またいろいろと事情もあろうが、それはいずれ聞くとして、どうじゃな、お美夜坊。おまえはこの女《ひと》を、母と思うかの?」
 きかれたときにお美夜ちゃんは、やっとのことでお蓮様をつきのけて、パッと泰軒先生の腰にとびついた。
「あたし、こんなよその小母《おば》さん知らないわ」
 わッとお蓮様が、大声に泣きふすと同時に、
 戸外《そと》にひと声、
「そうれ見ろ!」
 この言葉を残して、作阿弥の駕籠は地を離れた。

       十一

「何をいうんです、お美夜! こうしてお母さんがお迎いに来たのに、そんなことを言う児《こ》がありますか」
 お蓮様は半狂乱に、手をのばして、またもお美夜ちゃんをだきとろうとする。
「いやよ、いやよ! あたいの考えていたお母ちゃんは、そんな恐ろしい人じゃないわ、知らない小母ちゃんがやってきて、母ちゃんだなんて言ったって、誰がほんとにするもんか。イイだ!」
「まあ、なんて情けないことを! 今このおひげの小父《おじ》さんがおっしゃったように、わたしは今までおまえを構いつけずにおいたのは、それはもう、いろいろとつごうがあってね。いえ、思うとお
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