ごいて、
「お蓮様とやらには、またいろいろと事情もあろうが、それはいずれ聞くとして、どうじゃな、お美夜坊。おまえはこの女《ひと》を、母と思うかの?」
きかれたときにお美夜ちゃんは、やっとのことでお蓮様をつきのけて、パッと泰軒先生の腰にとびついた。
「あたし、こんなよその小母《おば》さん知らないわ」
わッとお蓮様が、大声に泣きふすと同時に、
戸外《そと》にひと声、
「そうれ見ろ!」
この言葉を残して、作阿弥の駕籠は地を離れた。
十一
「何をいうんです、お美夜! こうしてお母さんがお迎いに来たのに、そんなことを言う児《こ》がありますか」
お蓮様は半狂乱に、手をのばして、またもお美夜ちゃんをだきとろうとする。
「いやよ、いやよ! あたいの考えていたお母ちゃんは、そんな恐ろしい人じゃないわ、知らない小母ちゃんがやってきて、母ちゃんだなんて言ったって、誰がほんとにするもんか。イイだ!」
「まあ、なんて情けないことを! 今このおひげの小父《おじ》さんがおっしゃったように、わたしは今までおまえを構いつけずにおいたのは、それはもう、いろいろとつごうがあってね。いえ、思うとお
前へ
次へ
全430ページ中280ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング