むすめ》なのじゃ」
と作阿弥は憮然《ぶぜん》として立ったまま、じっとお蓮様を見すえています。
浮き世の労苦を、幾十本の深いしわときざんだ顔には、感慨無量の色が浮かんで、
「わしの娘じゃが、某所へ腰元にあがったまま、ズルズルベッタリに後添《のちぞ》いに直ったのち、今日今夜までなんの音沙汰もなく――泰軒殿聞いてくだされ。このお美夜坊は、こいつが屋敷へあがる前にできた子供でござる」
急に作阿弥は、おそろしい眼つきになって、お蓮様をにらみつけた。
「今ごろになって、里心がついたのか。身がってなやつめ! 貴様《きさま》に子《こ》のかあいさがわかったところをみると、よほど悪い星にめぐり会って、世のはかなさを知ったものと見えるナ」
畳に手をついたお蓮様は、片手の袖口を眼へやって、
「どうぞ、何もおっしゃらないでくださいまし。頼《たよ》りになるのは、このたった一人の小さな娘だけ……ということが、わたしの胸にもハッキリ落ちて、それでこんなに、前非を悔いてまいりましたものを」
「苦しむがよい! いくらでも泣くがよい! はぶりのよいときは、同じ江戸におりながら鼻ひとつ引っかけるでなし、今になって――
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