ひとつでとんできやしたが、ああ、苦しい!」
 一気にまくしたてる石金を先頭に、なが年おなじみのトンガリ長屋の住人たちが、ワイワイ言って作爺さんの土間へおしこんでくると!
「コラコラッ、下郎ども! 寄るでない。作阿弥先生に御無礼があっては、あいすまぬ。道をあけろあけろ!」
 という田丸主水正のどなり声。
 夢見るような顔つきの作爺さんが、その主水正のあとにつづいて、土間へ下り立とうとしている。
「お爺ちゃん、やっぱりゆくの?」
 チョビ安とお美夜ちゃんの、ふりしぼるような声が追う。
 作阿弥は、長屋の人たちの顔を見わたして、
「いかいお世話になりましたな」
 と言った。

       九

 静かな中に、炎々《えんえん》たる熱を宿した作阿弥の姿は、つめたい焔のように、見る人の胸を焼きつらぬかずにはおかない。
 ながらくひそんでいた芸術心に、点火された作阿弥。
 もう現実に鑿《のみ》を手にしているように、右手を痙攣的に、ヒクヒクと動かしながら、せまい土間へたちおりた。
 チョビ安とお美夜ちゃんへの愛に、うしろ髪引かるる思い……が、それも、一期《いちご》の思い出に名作を残そうとする、心のち
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