るはず……同じ駕籠にあたしが抱いてどこかへ連れ出したら、どんなに喜ぶことだろう。このおなじ江戸に住みながら、往き来はおろか、たよりひとつしなかった罪を、お父様にとっくり詫びなければならない……」
 口のなかにつぶやきながら、坂の上下を見わたすと、折りよく通りかかった一丁の夜駕籠。
 お蓮様は白い手をあげて、それを呼びとめた。
「ヘエ、どこへゆきますんで?」
 と駕籠屋がきいたが、ここで、場面はぐると大きく回転して、
「ヘエ、どこへゆきますんで?」
 と溝板《みぞいた》を鳴らして、この作爺《さくじい》さんの家へ駈け込んで来たのは、おもての角《かど》に住んでいるこのかいわいの口きき役、例の石屋の金さん、石金さんだ。
 ふたたび、とんがり長屋――。
「おらア湯にへえってたんだが、ガラッ熊の野郎が駈けて来やアがって、なんだか知らねえがりっぱなお侍さんが、素敵もねえ駕籠《かご》を持って、おいらの長屋の作爺さんを迎えに来たというじゃアござんせんか。イヤ、おどろいたね。どんなわけがあるにしろ、べらぼうメ、作爺さんをもってゆかれてたまるもんか――ッてんでネ、ヘエ、ぬれたからだのまんま、こうしてふんどし
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