に胸深くくいいってくる。
 どこにすがろう? いずこにこの心の慰めを求めよう――? そのとたん、人間たれしも思い浮かぶのは、肉親の情だ。
「ああ、ほんとうだ。こういうとき、あの児さえ手もとにいてくれたら、わたしは何もいらない。道場も、恋も――世の中のいっさいは、子供の愛にくらべたら、なんでもありはしないわ」
 お蓮様がこんな気を起こすとは、よっぽど心が弱ったものと言わなければなりません。
 外見《そとみ》は女菩薩《にょぼさつ》、内心《ないしん》女夜叉《にょやしゃ》に、突如湧いた仏ごころ。
 お蓮様には、たった一人の子供があるのです。先夫とのあいだに。
 その先夫のことは、さておき。
 いったん気持が、わが子のもとへはしったお蓮様は、だいたいが思いたつと同時に、じっとしていられない性質《たち》。
 そっと居間へ帰って、いくらかのお鳥目《ちょうもく》を帯のあいだへはさむがはやいか、庭下駄のまま植えこみをぬって、ひそかに横手《よこて》のくぐりから、夜更けの妻恋坂を立ちいでました。
 子供というのは、どこにいる? お蓮様は、いったいどこへゆくのであろう?
「もう今年《ことし》は、七つになってい
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