ったお蓮様が、ふと気がつくと、手桶《ておけ》をさげた源三郎、露草にぬれる裾を引きあげて、むこうへ帰ってゆく。
すると、です。
丹波の出ようひとつ、源三郎の合図ひとつで、一気に斬りかかろうと、隠れていたのであろう。そこらの植えこみや樹立ちの蔭から、伊賀侍の伏兵が、三人五人と立ちあがって、お蓮様には眼もくれず、源三郎のあとに従って行きます。
「きっとあの萩乃も、いま源様といっしょにいるに相違ない。もう……だめだ! すべては終わった!」
とお蓮様は、蒼白い唇でつぶやいた。
それきりそこの縁の柱にもたれかかって、襟に顎《あご》をうずめて考えこんでいる彼女――侍女の一人が、夕飯の迎いに来ても、首を振ってしりぞけたまま。
八
夕餉《ゆうげ》の膳部《ぜんぶ》もしりぞけて、庭の面《おもて》に漆黒《しっこく》の闇が満ちわたるまで、お蓮様はしょんぼり、縁の柱によりかかって考えこんでいたが――。
道場乗っ取りの策動も、もはやこれまで。
萩乃まで源三郎の手に取られてしまっては、もう自分のとる手段はどこにもない……。
失意。
身をはかなむ気持、無情の感が、時ならぬ木枯しのよう
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