みずから仕組《しく》んだ陰謀《いんぼう》と、この、おのが恋心とのあいだにはさまれた彼女の胸は、どんなに苦しかったかしれない。
そしてまた。
身を裂くような思いで、やっと愛着を振りほどき、りっぱに殺し得たとばかり思っていた、その当の相手の源三郎が!
どうです!
おどろいたことには、何事もなかったようなケロリ閑たるようすで、夕方、奥庭の植木に水を打っていた――。
あれから何事もなく、ずっとこの道場にいて、もうもう毎日、平凡な日を持てあましている、といったように。
渋江村の寮……火事――おとし穴……水責め……あれらはすべて、悪夢の連鎖? ではなかったか?
と、瞬間にお蓮様は、わが眼を疑ったのもむりではなかった。
「アラッ! 源様では――!」
思わず低声《こごえ》につぶやいて、横手に立っていた丹波の袖を、そっと引いたのでした。
峰丹波とお蓮さま、通りがかった廊下に、凝然《ぎょうぜん》と足をすくませて、進みもならず、しりぞきもならず……。
幽霊を見た気持というのは、あのときのことだろう。
ハッハッとあえぐ丹波の息づかいを、お蓮様は耳に近く聞いたのだった。
死んだはずの源三
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