、主水正はおどろいた眼をチョビ安へむけて、
「ホホウ、このお児《こ》は、伊賀の者か。ハッハッハッ、そう言えば、道理で、眉宇《びう》の間《かん》に、年少ながらも、人を人とも思わぬ伊賀魂《いがだましい》が、現われておるわい。イヤ、あらそわれんものじゃ」
 何を思ったかチョビ安は、それを聞くと、グイと小さな胡坐《あぐら》をかいて、
「ヘッ、笑わかしゃがらア。お爺ちゃんを引っぱり出してえもんだから、急に、おいらにまでお世辞を使ってやがる。ウフッ、その手にはのらねえよ」
 主水正は図星をさされて、苦笑の顔をツルリとなでながら、
「イヤ、どうも、辛辣《しんらつ》なものですナ。これ、チョビ安どの……同じ伊賀の者と聞いて、なんだか急に、なつかしゅうなったワ」
 すると、何事かを決心したらしい作阿弥は、クルリと主水正へ膝を向け変えて、
「御相談がござる。貴殿の手で、このチョビ安の父母をさがし出してやろうと約束してくだされば、この作阿弥、ただちに長屋を出て、御用にあいたつよう粉骨砕身《ふんこつさいしん》いたすでござろう」
と聞いた主水正は、横手《よこで》を打ち、
「ウム、つまり条件でござりますな。当方にお
前へ 次へ
全430ページ中266ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング