触手に触れて、すぐ越前の耳に入ったに相違ない。
壺でさんざんいじめられた柳生藩を、越前守は、助ける心だったのでしょう。
知らせを受けた対馬守はこおどりして、ただちに今宵。
こうしてこの江戸家老|田丸主水正《たまるもんどのしょう》に、迎いの駕籠《かご》をつけて、長屋へつかわしたというわけ。ところが。
さっきからいかに辞《じ》をひくうし、礼を厚うして出廬《しゅつろ》をうながしても、作爺さんの作阿弥は、いっかな、うんと承知しません。
ひとたびは主水正の必死のすすめで、ひさしく忘れていた芸術心が燃えあがり、よっぽど、やってみようか……という気にもなったようすだが。
いま自分がこの長屋を出るとなると、かあいいお美夜ちゃんやチョビ安は、どうなる?
泰軒さんに頼んでゆけば、大事ないとはいうものの、老先《おいさき》の短い身で、この愛する二人に別れる悲しみを思うと、それは、点火された芸術的興奮に、冷却の水をそそぐに十分だった。
泰軒先生は、しっかと腕をくんで、うつむいたまま、無言。
チョビ安とお美夜ちゃんは、左右から作阿弥の膝にとりすがって、かあいい眉にうれいの八の字をきざみ、下から、
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