」
主水正はしばしためらったが、
「神馬を彫らせて日光御廟に寄進《きしん》したいと、てまえ主人柳生対馬守が思いたたれたのですが、馬の彫刻といえば、誰しもただちに頭に浮かぶのが、この作阿弥殿。いつのころからか世にかくれて、巷にひそんでおられるとのこと……八方手をつくして捜索いたしましたなれど、皆目行方知れずで、これは、あきらめるよりほかあるまいと存じおりましたやさき、ある筋より、当長屋の作爺さんという御仁こそ、作阿弥殿の後身じゃともれ聞きましてナ」
チョビ安が口をはさんで、
「ねえ、作爺ちゃん! お爺ちゃんは、ただのお爺ちゃんだよねえ。ただの、トンガリ長屋のお爺ちゃんで、そんな人じゃアないよねえ」
「ウム、そうじゃとも! ただの作爺さんだとも!」
と作阿弥は、ニッコリうち笑み、
「田丸殿……と申されましたな。やっぱり拙者は、お聞きのとおり、ただの、このトンガリ長屋《ながや》の作爺じゃ。そのほうが無事らしい。せっかくのお申し出《い》でながら、この儀は、かたくおことわりするほかはござるまい。わしには、もう、鑿《のみ》を持てぬ……」
「その、ある筋とは?」
と、泰軒が主水正にきいていた
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