―という無言の相談だ。
泰軒は、すぐその意を汲んで、
「あなたのお心ひとつじゃ、はたからはなんとも言えぬ」
「作爺ちゃん、どこかへ行くの?」
のりだすチョビ安の尾についてお美夜ちゃんも心配げに、
「お爺ちゃん、どこへも行っちゃアいや!」
作阿弥は、ふたたびチラと眼をあいて、幼い二人へ一瞥《いちべつ》をくれた。
この老体。
かつは病後のこと。
遠い日光へ出かけて、精根のあらんかぎりをしぼりつくし、神馬を彫る! 自分の持っているすべてを、この一作へたたきこむのだ。全生命を打ちこみ、一線一線命をきざむのだ!……その彫りあがったときが、作阿弥の命のなくなるときにきまっている。
この申し出を受けるとすれば、それは、死出の旅路。
お美夜ちゃんとチョビ安の、二人のかあいい者とも、これが永《なが》の別れになる――。
作阿弥は、迷っているのである。
沈黙を破って泰軒が、思い出したように、主水正へ、
「それはそうと、どうして作阿弥どのがここにおられることを……イヤ、このトンガリ長屋の作《さく》爺さんが、作阿弥のかりの名であることを、尊台《そんだい》においてはいかにして見やぶられたかな?
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