荒山《ふたらさん》の桂《かつら》の大樹を、立ち木ながらに手刻《しゅこく》したものではござらぬ。のちに歌《うた》ケ浜《はま》においてその同じ桂の余木《よぼく》をもちいて彫《ほ》らせられたのが、くだんの薬師《やくし》の尊像《そんぞう》じゃとうけたまわっておる。ハイ、まことに古今《ここん》の妙作《みょうさく》」
 泰軒先生が無言のまま、深くうなずいた。田丸主水正はお株を取られたかたちで、だまっている。
 チョビ安とお美夜ちゃんは、常と違う作爺さんの態度に、いったい何事かと、あっけにとられて見まもるばかり。
「日光には、たしか弘法大師|御作《ぎょさく》の不動尊の御木像《おんもくぞう》も、あるはずじゃが、あれは、寂光寺《じゃくこうじ》の宝物でござったかナ?」
「は」
 主水正は、かしこまって、
「そのほか、慈眼大師《じげんだいし》の銅製《どうせい》誕生仏《たんじょうぶつ》、釈尊《しゃくそん》苦行《くぎょう》のお木像《もくぞう》、同じく入涅槃像《にゅうねはんぞう》、いずれも、稀代《きだい》の名作にござりまする」
「うけたまわっております。命のあるうち、ひと眼拝観したいものじゃと、作阿弥一生の願いで
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