ち、まずその筆頭にあげられるのは、本坊輪王寺に納めある開山上人《かいさんしょうにん》御作《ぎょさく》の、薬師仏《やくしぶつ》御木像《ごもくぞう》一体……」
 と主水正は、まるで、そのあらたかな仏像に面と向かっているかのように、うやうやしく一礼した。
「開山上人。諱《いみな》は勝道《しょうどう》。日光山の開祖でござって、姓は若田氏《わかたうじ》、同国《どうこく》芳賀郡《はがごおり》のお生れですナ。今を去る千百余年、延暦《えんりゃく》三年|二荒山《ふたらさん》の山腹において、桂《かつら》の大樹を見つけ、それを、立ち木のままに千手大士の尊像にきざまれたが――」
「なんだい、お開帳かい? こいつ、髪《かみ》をゆってる坊さんなんだね?」
 お美夜ちゃんの手を引いたチョビ安が、いつのまにか上がってきて、そう言って横手の壁を背に、お美夜ちゃんとならんでちょこなんとすわった。
「家の前《めえ》には、この長屋に用もありそうのねえ、りっぱな駕籠が、止まっているし、屋内《なか》にはまた、抹香《まっこう》くせえお談議が始まっていらア。ヨウ作《さく》爺ちゃん、泰軒小父《たいけんおじ》ちゃん、これはいったい、どう
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