から、このトンガリ長屋の王様とあおがれている、巷《ちまた》の隠者|蒲生泰軒《がもうたいけん》先生だ。
 両方から助《すけ》だちを乞うような眼を受けて、
「ウフフフ」と泰軒は含み笑い、
「あちら立てればこっちが立たず……という、柳生の御使者どの、この御老人は単にトンガリ長屋の作爺さんでけっこうだとおっしゃる。無益な前身の詮議だてなどなさらずと、早々《そうそう》にお帰りなされたほうがよろしかろう」
「とんでもない! それでは、かく申す家老の拙者が、わざわざ自身で乗りこんでまいった趣旨がたち申さぬ。先ほどから申すとおり、てまえ主人柳生対馬守、このたび日光造営奉行を拝命なされたについては、何がな後世へ残るべき彫刻をほどこして、廟祖御神君の霊をなぐさめたてまつらんと、そこで思いつきましたのが、神馬《しんめ》の大彫《おおぼ》りもの……」
「ヤイヤイ、なんでえ! どいたどいた。チョビ安様《やすさま》とお美夜ちゃんのおけえりだ……オヤ! この駕籠は?」
 土間口《どまぐち》に、チョビ安の大声。

       三

 田丸主水正は、必死につづけて、
「御承知でもござろうが、日光|什宝《じゅうほう》のう
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