の家に、四角くなってすわっている。
「サ、そういう理由《わけ》でござるから、なにとぞ、さっそく林念寺《りんねんじ》前の上屋敷のほうへ、おこしを願いたい。馬を彫《ほ》らせては、当代|唯《ゆい》一|無《む》二の名ある作阿弥《さくあみ》殿、イヤ、かようなところに、名を変えてひそんでおられようとは……?」
 主水正《もんどのしょう》がうやうやしく頭をさげる前に、迷惑そうにちょこなんとすわっているのは、作爺さんです。老いの身の病気あがり、気のせいかこんどの病で、めっきりおとろえたようです。つぎはぎだらけの縦縞の長半纏《ながはんてん》の上から、夏だというのに袖なしを羽織《はお》って、キチンとならべた両の膝がしらを、しきりに裾《すそ》を合わせて包みこみながら、
「ヘイ、なにがなんだか、おっしゃることがいっこうにわかりませんで、ヘイ。私《わたくし》は作爺と申す名もないもので……」
 恐縮しきった作爺さん、救いを求めるような視線を、横手へ向けます。
「イヤ、そうお隠しなされては、てまえホトホト困迷《こんめい》いたす」
 と田丸主水正も、横へ眼をやる。
 そこに、小山を据えたようにすわっているのは、先ごろ
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