くしゃく》が、せまい路地いっぱいに、いばり返って控えている。
「オウオウ、寄るんじゃアねえ」
「コラッ、この餓鬼ッ! そんなきたねえ手で、お駕籠にさわると承知《しょうち》しねえぞ」
陸尺の一人が、そう言って子供をどなりつける。ヨチヨチ駕籠のそばへ歩いてきて、金色《きんいろ》の金物《かなもの》のみごとなお駕籠へ、手を触れてみようとしていた三つばかりの男の子が、わっと泣きだす。
母親らしいおかみさんが、子供を抱きかかえて、
「なんだい、おまえさん、何をするんだい。子供に罪はないじゃないか」
取りまいている長屋の連中のなかから、
「このトンガリ長屋へ来て、きいたふうなまねをしやがると、けえりには駕籠をかつぐかわりに、仏様にしてその駕籠へのせてけえすぞ」
「どこの大名か知らねえが、このトンガリ長屋は貧乏人の領地だ。気をつけて口をきくがいいや」
「何を洒落《しゃら》くせえ。柳生一刀流にはむかう気なら、かかってこい」
なんかと、駕籠かきと長屋の人々と、ワイワイいう騒ぎだ。
そのののしり合う声々を戸外《そと》に聞いて、田丸主水正は、ここ作爺さんの住居《すまい》……たった一間《ひとま》っきり
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