おかみさんもある。
唄が佳境にはいってくると、しみじみ身につまされるチョビ安、思わず、自分とじぶんの声に引きいれられて涙ぐみ、一段と声をはりあげて、
「あたいの父《ちゃん》はどこへ行《い》た
あたいのお母《ふくろ》……」
「小僧め、唄いながら泣《な》いてやがら」
「ヤイヤイ、唄うのと泣くのと、別々にしねえナ」
「何を言やんで、とんちきメ! 情知らず! この兄《あん》ちゃんの身にもなってみねえ。好きや道楽で町に立って、こんなことをしてるんじゃアねえや。親をさがしあてようッて一心なんだ」
「そうとも、そうとも! そんな同情《どうじょう》のねえことをぬかすやつア、江戸ッ子の名折《なお》れだ。オ、見りゃあ、伊勢甚《いせじん》の極道息子《ごくどうむすこ》じゃアねえか。てめえなんかに、この兄《あん》ちゃんの心意気がわかってたまるもんけエ。代地《だいち》ッ児《こ》の面《つら》よごしだ。たたんじめエ!」
あやうく喧嘩が始まりそう。
「エエ、じれったいお地蔵《じぞう》さん」の唄声に合わせて、お美夜ちゃんは両の袂を振りまわし、さもじれったそうな態度《こなし》よろしく、「石では口がきけないね」で口に両
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