賀国柳生の者だとばっかり、皆目手がかりがねえんだが、もしお立ちあいの中に、心あたりのある人があったら、ちょいと知らせておくんなせエ。いい功徳《くどく》になるぜ。サア、夏のことだ、前口上《まえこうじょう》が長《なげ》えと、芸が腐らあ。ハッ、お美夜太夫! お美夜ちゃん! とくらア。ヘッ、のんきなしょうべえだネ」
「あいよ」
そばに立っているお美夜ちゃんが、ニッコリ答える。この暑いのに振袖で、帯を猫じゃらしに結び、唐人髷《とうじんまげ》に金《きん》の前差《まえさ》しをピラピラさせたお美夜ちゃん、かあいい顔を真っ赤にさせて、いっぱいの汗だ。
「ようよう! 夫婦《めおと》の雛形《ひながた》!」
「待ってました! 手鍋《てなべ》さげてもの意気《いき》で、ひとつ願いやすぜ」
いろんな声がかかる。
二
芸といっても、たったひとつを売りもの。
チョビ安《やす》の「辻のお地蔵さん」に合わせて、お美夜《みや》ちゃんがいろいろと父母《ふぼ》を恋《こ》うる所作事をして見せるんです。
振付けは言わずと知れた、藤間《ふじま》チョビ安。
「むこうの辻のお地蔵さん」で、お美夜ちゃんは首をかし
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