情景。
あれも人の子|樽《たる》拾い……これは冬の気分。
今は夏ですから、酒屋の小僧も大いばりで、十二、三のいたずら盛りのが、はだかのうえへ、三河屋と書いた印判纏《しるしばんてん》を一枚ひっかけ、
「エエイ、ちくしょう、泣かしゃアがる!」
と三河屋の小僧さん、人のあいだから中をのぞきながら、伝法に鼻をこすりあげている。
その人だかりのなかを見ますと……いや、のぞくまでもない。
この狭い横町いっぱいに、唄声が氾濫しているのだ。
その唄を聞けば――イヤ、聞くまでもない。
先刻《せんこく》御承知の、
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「むこうの辻のお地蔵さん、涎《よだれ》くり進上《しんじょう》、お饅頭《まんじゅう》進上《しんじょう》、ちょいときくから教えておくれ」
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皆様おなじみの、あのチョビ安つくるところの親をたずねる唄です。
人の輪の中に突っ立って、大声にこれを唄うチョビ安|兄哥《あにい》……ひさしぶりのチョビ安だが、その服装《なり》がまたたいへんなもので。
四十、五十のやくざ[#「やくざ」に傍点]でも着るような、藍万筋《あいまんすじ》のこまかい単衣《ひ
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