。踏《ふ》むと音がするんです。
 忍んで来ることができない。盗み聞きは不可能。
 今そのうぐいす張りの細廊下がキューッとふしぎな音をたてて鳴いた、人の体重を受けて。
「誰です、そこにいるのは?」
 お蓮様は低声《こごえ》にとがめた。
「誰だときいているに、誰? 何者です……」

       五

「誰です」
 お蓮様は、繰り返した。
 鶯張りの板がきしんで、それに答えるように鳴るだけ……返事はない。
 舌打《したう》ちしたお蓮さまは、ツと立って、障子をひらいた。
 丹波《たんば》である――峰丹波が、ノッソリと突っ立っているのだが。
 その顔をひと眼見たお蓮様、あっとおどろきの叫びをあげた。
 血相をかえた丹波、右手を大刀の柄《つか》にかけて、居合腰《いあいごし》で、部屋の外の小廊下に立っているではないか。
「マア、おまえ! どうしたというのです、わたしを斬ろうとでも……」
 それには答えず、丹波はハッハッとあえぎながら、
「どこにいます。どこにいます?」
 そう言いながら、眼を室内に放って、四|隅《すみ》をにらみまわすようす。
 および腰に体《たい》をひねって、今にもキラリと抜きそう
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