コ、コレ、源三郎さまはどこにおいでだ。イヤ、若君にはいずくに……」
「そして、まア、くやしいのなんのって、お二人で膝がくっつきそうにすわって、ほっぺたを突つき合ったり、会いたかったの見たかったのッて、そのいやらしいッたら、とても見ちゃアいられませんの」
「コレコレ、順序を立ててものを言え。漁師六兵衛とやらの娘とかいったな。シテ、源三郎様は、貴様の家においであそばすのか」
「ハイ、お父《とっ》さんが川から助けてきて、それからずっと、わたしの家の裏座敷に、寝たり起きたりしていらっしゃいます」
「ウム、そうかッ!」
 大八ははやりたつ両手で、自分の膝をわしづかみにしながら、
「して、昨晩その源三郎様のもとへ、萩乃さまが会いにおいでになった、と申すのだな?」
「ハイ、あの丹下様という、隻眼隻腕の怖《こわ》らしいお侍さんにつれられて――」
 突然、突っ立った谷大八、廊下のほうへ向かって大声に、
「オイ、玄心斎どの、イヤ、皆の者、殿のお隠れ家《が》が判明いたしたぞ」
 と呼ばわりますと、今まで隣室の大広間で、ワイワイゆうべの騒ぎを話題にしていた一同は、玄心斎を先頭に立てて、なだれこんできた。

前へ 次へ
全430ページ中233ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング