陽が、庭木いっぱいに黄金《こがね》の雨のように降りそそいで、その下を急ぐお露の肩に、白と黒の斑《ふ》を躍《おど》らす。
さいわい誰にも見とがめられずに、奥座敷の縁側のそばまで来たお露は、沓《くつ》ぬぎにうずくまるように身をかがめて、低声《こごえ》。
「あの、モシ、どなたかおいでではございませんでしょうか」
「アア、びっくりした!」
座敷の真ん中に、大の字なりに寝ころんでいた谷大八が、ムックリ起きあがった。
三
ものを言うたびに、首を振る。すると、大髻《おおたぶさ》がガクガクゆらぐ。
これが、谷大八の癖《くせ》だ。
「なんだ、娘。貴様はどこからまいった」
「アノ、わたくしは、葛飾《かつしか》の三|方子《ぽうし》川尻《かわじり》の六兵衛と申す漁師の娘で、お露という者でございますが――」
「ナニ、漁師の娘? それが何しにここへ……誰がここへ通した。門番へことわってきたのか」
「いえ、ただスルリとはいってまいりましたが――アノ、お侍様たいへんなことができましてございます。源三郎様のところへ、昨晩こちらのお嬢様が逃げていらっしゃいまして」
「ナニ? 源三郎様のところへ?
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