く》の得たものではないと、信ずるところあるもののごとく、玄心斎はそう言って、やっとみなをおさえているのだ。
 ところで、この司馬の屋敷は、門をはいると道が二つにわかれて、一方は板敷の大道場を中心にしたひと構《かま》え、ここに、お蓮様丹波の一党が巣を喰っているのです。
 そして。
 もう一つの道は、そのまま奥庭へ通じて、庭のむこうの壮麗をきわめた一棟――源三郎の留守を守る伊賀の連中が、神輿《みこし》をすえているのはここだ。
 で、道をまちがえたのだ。お露は。
 来てみると、想像していた以上に大きな屋敷である。
 まず、りっぱな御門におどかされたお露は、とみにははいれずに、しばし門の前をいったり来たりしたが、これでは果《は》てしがない……。
「こちらのお嬢さまが、いま自分の家にいる若殿様を慕って、ゆうべからこっそり会いに来ていると知れたら、どんな騒ぎになるだろう。イエ、大騒ぎにしないではおかない」
 萩乃と源三郎のことを思うと、弱いお露が、ぐっと嫉妬で強くなった。スタスタと門をくぐって、数奇《すき》をきわめた植えこみのあいだを、奥のほうへ――。
 もうとうに朝飯のすんだ時刻。
 ほがらかな
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