だわからぬかの?」
「は、なにぶんどうも、偽物《ぎぶつ》ばかり現われまして……いつどこで紛《まぎ》れて、何者の手に入りましたやら、とんと行方知れずにあいなり、まことに遺憾至極ながら、手前、勘考いたしまするに、こけ猿なるものは、もはや世にないのではないかと……」
「なに、もはや世にない?」
 眼を怒らせた対馬守が、老家老を睨《ね》めつけたとき、
「オヤ、殿様、こちらでしたか。あら、このお爺さんは?」
 伝法な女の声が、横手のふすまをあけて、このお上屋敷の主従対座の席へはいってきた。
 人を人とも思わない言葉に、主水正がびっくりして見あげると、櫛巻お藤!……ということは、もとより田丸主水正は知らない。
 椎《しい》たけ髱《たぼ》にお掻取《かいと》り、玉虫色の口紅《くちべに》で、すっかり対馬守お側《そば》つきの奥女中の服装《なり》をしているが、言語《ことば》つきや態度は、持ってうまれた尺取り横町のお藤|姐御《あねご》だ。
 それが、くわえ楊枝《ようじ》でぶらりとはいってきて、殿様の横へべったりすわったんですから――いかさま妙な取りあわせ。
 田丸老人がおどろいたのは、もっともで。
「殿、この
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