女《もの》はいったい――旅のお慰みとしても、チトどうもお見苦しくは……」
「イヤ、さような儀ではない。いたって野育ちの女芸人、余にチト考えがあって、かように虜《とりこ》にいたしておくのじゃ。側女《そばめ》などでは断じてない。安心せい、安心せい」
「ホホホ、お大名のお妾なんて、そんな窮屈な役目は、こっちからこそごめんだよ。お爺さん、安心おしよ。なんてキョトンとした顔してるのさ」
二
対馬守は、ふと思い出したように、
「源三郎はいかがいたした」
「ハイ、それが、その、実は……」
と主水正は、言いよどんだが、
「たびたび御書面をもって、上申《じょうしん》つかまつりましたとおり、司馬《しば》先生生前より、妻恋坂の道場に容易ならぬ陰謀がありまして――」
「イヤ、それは聞いた、聞いた。その後どうなったかとたずねておるのじゃ」
「あくまで源三郎さまを排除申しあげんという一味の秘謀らしく、源三郎様には、先ごろより行方知れずになられ――」
それを知りながら、なぜ腕をこまねいておるかッ? 高大之進《こうだいのしん》をはじめ、腕ききの者をそろえて出府させてある。それよりも、源三郎つき
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