ったのだが、あわただしい一人のさけびにフト心づくと、いつのまにまぎれこんだものか、左膳チャンと行列のなかにはいって、足なみそろえていっしょに歩いていた。
 藤田家重代の、松の下露の銘ある宝壺が、このときみごとに奪われたことは、言うまでもない。だが、心願の百までは、まだいくつあることやら。
 恋の憂さを忘れようと、街道に狂刃をふるう丹下左膳。

   お山《やま》四十|里《り》


       一

 江戸へ着いた柳生|対馬守《つしまのかみ》一行。麻布|林念寺前《りんねんじまえ》の上《かみ》やしきで、出迎えた在府《ざいふ》の家老|田丸主水正《たまるもんどのしょう》を、ひと眼見た対馬守は、
「主水ッ! 御公儀のお情けで、名もなき壺に秘図を封じこめ、屋敷の庭隅に大金が埋ずめあるなどと……貴様、いいようにされて、つかまされたなッ」
 とどなった。
 剣眼|隼《はやぶさ》よりも鋭い柳生対馬守さすがに、あの、上様と愚楽と、越前守とで編みだしたからくりを、まだ話を聞かぬ先に、みごとに見抜いてしまったのだ。
「恐れながら、かの愚楽老人より、それとなく申しふくめられまして……日光は迫るワ、こけ猿《ざる
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