け猿に出会わないともかぎらない。こういう左膳の肚ですから、なんでもいい、壺とさえ見れば掠奪するのだ。
 今日はその第一着手。
 煮しめたような博多の帯に、左膳、矢立をさしている。
 それを抜き取って、つぎに懐中から、懐紙を二つに折った横綴の帳面を取りだした。
 表紙を見ると、左膳一流の曲がったような、一風格のある字で、
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心願百壺あつめ
   享保――年七月吉日
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 と書いてある。
 大名の茶壺行列へ斬りこんで、これから百個の壺を集めようというのらしい。七月吉日とありますが、斬りこまれるほうにとっては、どう考えて[#「考えて」は底本では「孝えて」]もあんまり吉日ではありません。
 これは、その筆初め。
 片膝ついたうえに、その帳面の第一ページを開いた丹下左膳。
 片手ですから、こういうときはとても不便だ。
 矢立を砂に置き、筆を左手に持ちかえて、たっぷり墨をふくませたかとおもうと、
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「石川左近将監殿御壺一個、百潮《ももしお》の銘《めい》あり
   駿州千本松原にて」
[#ここで字下げ終わり]
 と、サラサラとしたため
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