終わった。
 そして、片手に壺を握るやいなや、
「百潮というからには、海へ帰りゃあ本望だろう」
 ドブーン――!
 うちよせる波へ、その壺を投げこんでおいて、あとをも見ずにスタスタ歩きだした。
 ほんとに、百の壺を集めるうちには、どういういきさつで真のこけ猿が現われないものでもないと、左膳はまったく信じているのだろうか。
 そんなことは、どうでもいいので。
 茶壺というものに対して、魔のような迷執を持ちはじめた丹下左膳、ただ、壺を手にすればいいのだ。いや、濡れ燕に人血を浴びさせればいいのだ。ひょうひょうとして左膳はたちさって行きます。

       七

 東海道の道筋に、白衣をまとったおそろしく腕のたつ浪人者が、伏せっていて、やにわに路傍の藪からおどり出ては、それも奇妙に、茶壺の道中だけをねらう……。
 というので、人呼んで藪の白虎。
 これが宿場宿場の辻々に評判になって、人々みな恐れをなしたのは、このときである。
「駿河の国にいたりぬ、宇津の山にいたれば、蔦《つた》、楓《かえで》はえ茂りて道いと細う暗きに、修行者に逢いたり。かかる道をば――」
 伊勢物語の一節。
 この宇津谷峠《
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