「おい! 返せ、返せ。狼藉者だッ!」
 ぶっさき羽織が、さきへゆく行列へ呼ばわった。

       五

 長い行列の先頭に立っていた竹田なにがし。
 うしろのほうから、人のくずれたつ騒ぎが伝わってきても、はじめは、それほどの大事とは思わなかった。
「たいせつの御用だ。喧嘩はひかえろッ、ひかえろッ!」
 同士打ちと思ったのです。
 二、三人の若侍を引き連れて、砂をまき上げてしんがりのほうへかけかえってみると、すでに五、六人の供の者が、浪打ちぎわや松の根もとに、あるいはうずくまり、あるいはのた[#「のた」に傍点]うちまわって、浅黄色のぶっさき羽織を着た一人などは、あわてふためいて海のほうへかけだして倒れたらしく、遠浅のなぎさにのけ[#「のけ」に傍点]ぞった彼の死骸。
 その平和な死顔を、駿河湾の浪が静かになでている。
「竹田氏、竹田氏ッ! さきほどの痩せ浪人ですッ!」
「イヤ、おどろきいった腕前、またたくうちにこのありさま」
「かような手ききは、見たことも聞いたこともない」
 と一同、口をそろえてわめきたてたが――それはそうだろう、おどろくほうがどうかしている、何しろ相手は、丹下左膳
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