噛みつきそうににらむと、その白衣の浪人は平気で、なおも背中がくっつきそうに追いすがってくるのだ。
「オイ、いいかげんにせんか。見れば貴殿も侍のなれのはて、いくら狂人でも、詮ない悪戯はよしたがよかろう」
 ぶっさき羽織が、
「マア、よい。さような者にかまうな。そこで榊原の問題だが、本人の心底は、いったいどういうのであろうな」
 二人とも左膳などは、眼中にない。世間話をつづけて、ふたたび歩をすすめようとするとたん。
 すぐ背後で、しゃがれた声がした。
「心底か。うふふ、おれの心底を見せてやろうかの?」
 人の話に割りこむように左膳二人をかきわけてなかへはいってくる。
「うるさいッ! エイッ! とめどのないやつじゃッ!」
 かんしゃく袋を破裂させた色黒の武士、しろがねの光が、突如横に流れたかとおもうと、抜いたんだ、やにわに左膳を目がけて……。
「オットットット! あぶねえあぶねえ」
 左膳、はじめて声を出した。愉快でたまらなそうな笑い声だ。が、依然としてふところ手のまま、
「抜いたな、ぬいたな。オイ、いったん刀を抜いた以上、そのままじゃア引っこみがつくめえ。いやいやながら丹下左膳、お相手つ
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