ふらふらしている左膳の腰を、通りぬけざま、ドウッ! 足をあげて蹴たおした。
空《くう》を泳いだ左膳、ヒトたまりもなくペタンと砂に尻餅をついたまま、行列の遠ざかるのを、しばらくじっと見送っている。
長い長い千本松原に、槍の柄が光り、お定紋に潮騒がまつわって、だんだん小さくなってゆきます。絵のよう……。
「ウフフ!」
小鼻で笑った左膳、砂をはらって起きあがりました。
四
その松原も、もはや出はずれようとするころ。
さっき左膳を、最後に蹴とばしてきた色の黒い侍。
「イヤ、そのときおれは、それは筋道が違うと、榊原に言ってやったのじゃ。いくら養子の身だからとて、そうまで遠慮する必要は、おれはないと思うのじゃが、何しろ、相手が相手じゃから……」
と同僚の噂話であろう。横にならんで行く、浅黄のぶっ裂き羽織を着た四十あまりの士《ひと》と、しきりに話しこんでゆく。
と!
ふとうしろに、人の気配がした。なにごころなく振りかえってみると、まるでくびすを踏みそうに、さっきのみすぼらしい乞食浪人が、尻きれ草履を鳴らしてピタピタあとを追ってくる。
「こやつ、いつのまに――?」
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