める。壺の真偽を判別する鍵が、今ここで明らかにされるのですから、対馬守、思わず真剣になった。
大きくおどるような、読みにくい文字です。
[#ここから2字下げ]
「偽物いかに現わるるとも、急所をきわむれば、鑑別のこといと容易なり。御当家に伝わるこけ猿の壺には……」
[#ここで字下げ終わり]
一風宗匠の筆が、そこまで動いたとたん!
大勢あわただしい跫音《あしおと》が、殿様をさがすように長廊下を近づいてきて、
「殿! こちらでござりますか」
かんじんのところへ心ない邪魔が……対馬守は声をあらげて、障子そとの廊下へ、
「治太夫か。何じゃ、そうぞうしい! いま宗匠と重要な筆談をかわしておる。さがっておれッ」
治太夫と呼ばれた侍の声で、
「いえ、殿。至急お耳にいれねばならぬことが――」
「エエイッ、さがれと申すに。そっちよりこっちがたいせつじゃワ――宗匠、そのさきはどうした」
と対馬守、必死に一風に書きつづけるようにうながしますが、老宗匠の筆は、そこでハタと止まってしまって、キョトンとした顔をあげている。
気がついた対馬守、
「オオ、そうじゃったナ。いかに大声を出しても、言葉は通ぜぬ
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