のじゃったな。エイッ、世話のやける老人《としより》じゃ」
「殿、殿! 火急の儀にござりますれば……殿、殿ッ!」
「うるさいッ! このほうがよっぽど火急じゃッ」
 と癇癪を起こした対馬守、いきなり宗匠の手から筆を引ったくって、ドブリと墨をつけるがはやいか、膝先の畳の上へ、手習いのような文字を書いた。
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「宗匠、それからどうした。こけ猿の壺には、どういう目印があるというのだ」
[#ここで字下げ終わり]
 とこう滅茶苦茶に書き流して、ポンと筆を投げすてた。
 一風宗匠は、すこしも動じません。それどころか、袋のような口で小さなあくびをしたかと思うと、手をふった。めんどうくさそうに、眉をひそめた。
 もうやめた、今日はもうあきたから許してくれ、またこんど、気分のよいときに……そう言っているのだ。
 いらだち切った対馬守は、声の通じないのも忘れて、宗匠の耳へ噛みつくように、
「イヤ、わしが悪かった。畳へ字など書いて、宗匠をおどろかしたのは、なんともはや申し訳ない」
 一生懸命の対馬守は、宗匠の前に両手をついて、つづけさま頭をさげながら、
「サ、こんなにあやまるから、機嫌をなお
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