く物体のような感じ……油紙をもんだような顔をほころばせて、小さなかあいい眼で対馬守を見あげている。
舌が動かないのです。口がきけない。それでも、先ごろまでは耳はまだ達者で、こっちの言うことだけは通じたのですが、今ではもう耳もだめになったらしく、何を言ってもニコニコしているばかりです。
眼だけだ、残っているのは。
対馬守は、静かに硯箱を引きよせ、巻紙をひろげて、サラサラと一筆したためました。
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「宗匠に借問《しゃくもん》す。こけ猿と称する偽物、江戸に数多く現われおる由、ほんものを見わくる目印、これなきものにや」
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すり寄って、対馬守の手もとをのぞいていた一風宗匠は、コックリとうなずいて、両手を差し出した。
その筆と紙をこっちへ……というこころ。
三
やっとのことで一風の左手に、巻紙を握らせた対馬守は、その、木の根のような右手へ、墨をたっぷり含ませた筆を持たせると。
こまかくふるえる手で、宗匠の筆が左のような文字を、したためはじめた。
燭台を手もとに引き寄せて、対馬守は横あいから、異様に燃える眼でその筆先をみつ
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