ようにだんだん早足になって、これじゃアかけ出さなくちゃア追っつかない……。
と、なったとき、来ました。一風宗匠の部屋の前へ。
「宗匠、どうじゃな」
対馬守は、どなるように言いながら、室内《なか》へはいった。
「老体じゃ、この長旅に弱らねばよいがと、案じているがの」
小さな置物が動くように、一風宗匠はそろそろと、敷物をすべりおりました。殿のうしろから厚い褥《しとね》を二つ折りに、折り目をむこうへむけて捧げてきたお子供小姓が、急いで正面床柱の前へ、そのおしとねを設ける。
それを対馬守、爪《つま》さきでなおしながら、あっちへ行っておれ!……と、ついて来た者へ眼くばせです。
一同が中腰のままさがってゆくのを待って、対馬守は一風のほうへ向きなおった。
柳生藩の名物、お茶師一風――百十何歳だか、それとももう百二十歳以上になるのか、自分でも数えきれなくなって、宗匠の年は誰にもわからない。八十、九十のお爺さんを、お孫さん扱いしようというのだから、すごいもので。柳生藩の生きた藩史、今なら知事の盃などいくら持っているかしれない。
人間もこう枯れ木のようになると男女の性別など超越して、なんとな
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