です。
江戸へさえ出れば、なんとかなる……これが対馬守のはら。この、源三郎と司馬道場のいざこざも、どうなっていることか――。
剣をとってはまことに天下一品、腕前からいっても源三郎の兄である剣豪柳生対馬守の胸も、この心たのしまない旅に、ちぢに乱れて。
平塚――大山|阿夫利《あふり》神社。その、三角形の大峰へ詣る白衣の道者がゾロゾロ杖をひく。
藤沢――境川にまたがって、大富、大坂の両町。遊行寺《ゆぎょうじ》は一遍上人の四世|呑海和尚《どんかいおしょう》の開山。寺のうしろの小栗堂は、小栗判官照手姫の物語で、誰でも知っている。
戸塚――程ケ谷。
おとまりはよい程ケ谷にとめ女、戸塚まえで、放さざりけり……ちょうど地点が一夜のとまりに当たっていますから、大小の旅宿《はたご》がズラリと軒をならべて、イヤ、宿場らしい宿場気分。
町のはずれまで宿役人、おもだった世話役などが、土下座をしてお行列を迎えに出ている。いくら庄屋でも、百姓町人は絹の袴は絶対にはけなかったもので、唐桟柄《とうざんがら》のまち[#「まち」に傍点]の低い、裏にすべりのいいように黒の甲斐絹《かいき》か何かついている、一同あ
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