ですから、藩の上下をあげてそのあわてようといったらありません。
壺はかいもく行方知れず。日光おなおしの日は、容赦なく迫る。たいがいのことにはさわがない対馬守も、これにはさすがに手も足も出ない。
やっと神輿《みこし》をあげたわけですが、
「東海道は一本道じゃ。江戸のほうからまいる旅人に気をつけるようにと、先供《さきとも》によく申せよ。どうも余は、今にも主水正から使いがありそうな気がしてならぬ」
とこうして途上でも、剛腹な殿様が壺のことを気にしているのは、もっともなことで。
虫が知らせる……というほどのことでもないが、江戸へ近づくにつれて、なんとかして壺の吉左右《きっそう》が知れそうなものだと、しきりにそんな予感がするのです。
百いくつになる一風宗匠も、これが最後の御奉公とばかり、枯れ木のようなからだを駕籠に乗せて、やっとここまで運ばれてきたのですが、何しろ希代の老齢、江戸へ着くまでからだがもてばいいけれど。
にせのこけ猿が二つも三つも現われたという。この噂だけは、国もと柳生藩にも伝わっているので、唯一無二真のこけ猿の鑑定人としてどうしてもこの一風宗匠の出馬はこの際必要だったの
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