って来たのが、六兵衛のひとり娘お露です。破れ行燈の灯を受けて、手織りのゴツゴツした縞|木綿《もめん》、模様もさだかならぬ帯をまいて、見るかげもない田舎娘ですが……その顔の美しさ! 着飾らして江戸の大通りを歩かせたら、振りかえらぬ人はないであろう。ことにその眼! 今その眼が、艶に燃えているのは、ハテ、どういうわけでありましょう?

       二

 年齢《とし》は十七? それとも八?
 ポッと上気した顔を、恥ずかしそうに灯にそむけて、お露は枕もとへ膝をすすめ、
「アノ、もうお薬をめしあがる時刻で……」
「ウム」
 やっと腹《はらん》ばいになった源三郎、のびた月代《さかやき》を枕に押し当てたまま、
「イかいお世話になるなア。あの左膳とともに、あなたの父上にあぶないところを救われてから、もうよほどになる。左膳はあのとおり、すぐ恢復いたしたが、おれは濁水を飲んだのがあたったとみえて、いまだにこのありさまとは、われながら情けない」
 身もだえする源三郎のようすに、お露は美しい眉をひそめて寄りそい、
「すこしおみ足でもおさすりいたしましょうか。マア、そんなにおじれにならずに、ゆっくり御養生あそ
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