わめをつけたうえで、いばっているんだから世話はない。
その連中の通り過ぎるの待って、左膳は萩乃をつれて、妻恋坂をあとにしました。折りよく通りがかったのは、二丁の空駕籠。左膳と萩乃と二人の姿は、その駕籠にのまれたが――。
ゆく手は?
ちょうど、この同じ時刻。
話はここで、この二丁駕籠の先まわりをして……三方子川の下流です。
川釣りの漁師、六兵衛の住居。
奥の六畳……といっても、ふすまはすすけ、障子は破れ、柱などは鰹節のように真っ黒な――真ん中に、垢じみた薄い夜具を着て、まだ病の枕から頭があがらずにいるのは、柳生源三郎でございます。
伊賀の暴れン坊の面影は、今この、病む人の身辺に、わずかに残っているにすぎない。あの穴埋め水責めの危機の際に、悪い水を飲んだらしいのです。衰弱したからだに余病を発して、あれからずっと、この川網六兵衛の家に寝たッきりなのだ。
看病するのは、あの痩せ鬼のような左膳。かれのどこに、そんなやさしい心根があるのか、まるでもう親身のようなこまかい心づかい、
それと、この家の娘、お露――。
「あの、御気分はいかがで……」
いまも、そう言って枕もとにいざりよ
前へ
次へ
全430ページ中147ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング