っさき》、床を指さしている濡れ燕……。
下段の構えだ。
二
世の中に、こわいもの知らずほど厄介なものはありません。
いま、抜刀を下目につけて、喪家の痩せ犬のように、曲《きょく》もなく直立している左膳の姿を眼の前にして。
これを、組みしやすしとみたのが不知火流の若侍二、三人。
おのが剣眼が、そこまでいっておりませんから、相手の偉さ、すごさというものがすこしもわからない……こわいもの知らずというのは、ここのことです。
「身のほど知らずのやつメ、鬼ぞろいといわれる当道場へ、よくも一人で舞いこみおったな」
「鎧櫃から化け物浪人とかけて、なんと解く――晦日《みそか》の月と解く。心は、出たことがない」
なんかと、なかにはのんきなやつがあって、そんな軽口をたたきながら、もうすっかりあいてをのんでかかった気。
抜きつれるが早いか、前後左右、正眼にとって――。
よしゃアよかったんです。
痩せこけた左膳の頬肉が、虫のはうようにピクピクと動いた。
「よいか。血の雨のなかを、縦横無尽に飛び交わしてくれよ濡れ燕」
じっと自分の剣を見おろして、そうつぶやいたかとおもうと! 殺
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