手前たちのなまあったけえ血に濡れてえといって、さっきから羽搏《はばた》きをしてきかねえのだ。ソーラ! この羽ばたきの音がてめえたちには聞こえねえかッ!」
 と左膳、左腰に差した大刀の鍔元を、一本しかない左手に握って、体《たい》を落としざま、ゆすぶった。
 カタカタと、鍔が鳴る。
 一同は立ちすくんでいます……すわっているのは、丹波だけ。
 先生、腰が抜けたんじゃアあるまいな。

   おいらが手引きを


       一

「丹波ア……!」
 鬼哭《きこく》を噛むような、左膳の声が。
「汝アこの女――」
 と左膳、かたわらにいすくむお蓮様へ、キラリと一眼をきらめかせたのち、
「汝アこの女と、同じ穴の狸だな、イヤさ、同臭のやからだな」
 ぐっと調子をさげて、
「おもしれえ。おれア伊賀の源三郎に、なんの恨みつらみもねえ痩せ浪人。だがナ、人間にゃア縁ごころてえものがある。またこの丹下左膳の胸には、男の意気というものがあるのだ!ッ」
 ひとことずつ言葉を句ぎって、そのたびに左膳、一歩一歩と峰丹波に近づく。
 どうしてこの鎧櫃のなかに、人もあろうに、この白面の殺人鬼がひそんでいたのだ?
 愕然
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